日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

5月17日例会討論要旨

5月17日例会の討論要旨をお知らせします。よろしくお願いします。

【討論要旨】

今回から『現代政治の思想と行動』に入り、今回は第一部を扱った。うち方阿離氏が第一章「超国家主義の論理と心理」・第二章「日本ファシズムの思想と運動」・第三章「軍国支配者の精神形態」を、山口一樹氏が第四章「ある自由主義者への手紙」・第五章「日本におけるナショナリズム」・第六章「『現実』主義の陥穽」・第七章「戦前における日本の右翼運動」を報告した。

丸山が1946年時点では七三一部隊のことを知らなかったことが推測されるところから、戦後直後にどこまで情報が公開されており、当時の人々の認識がどれだけのものであったのか、という質問が出た。それに対しての返答は、七三一部隊に関する情報公開は50年代以降であるということだった。またそこから発展して、ハンナ・アーレントの『イェルサレムのアイヒマン』の例を出して、「悪の平凡さ」を指摘し、ファシズムは普通に起こりうるものであるという議論が起こった。主権は主権を停止させる力がなければ成立せず、常にそうした例外が存在している。主体性・民主主義・近代そのものがファシズムである。丸山はそうしたことに対する問題提起をしようとしているのではないか、という議論になった。

次に、山口氏は吉本隆明の議論を援用して丸山批判を深めようとした。曰く、丸山の思考法はインテリの典型であり、大衆が視野に入っていないということである。吉本による批判は1967年の全共闘の時代になされたものであり、東大出身の丸山が戦後民主主義のオピニオンリーダー的な存在であったことから、恰好の槍玉であった。しかし丸山は吉本の批判にたいして返答せず無視しているようである。

最後に、本書が書かれた時点では検閲を恐れて記述できなかった部分があることから、本書は終戦後当時の史料としても読めるのではないか、との指摘もあった。丸山は初期の民権運動を評価しており、ナショナルなものを眼差していた。しかし当該期の学問的潮流の影響でアジアについては語っていない。これは戦中からの連続としてとらえるべきではないか、ということになる。

今回から丸山の戦後の著述に入っていくので、戦前からの連続性も鑑みつつ、思想の変遷、あるいは一貫しているものを注視していく必要があるだろう。

文責:松本智也

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