日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

10月27日 例会報告要旨

論題
博論構想報告:戦後日本における学校教員と地域社会運動の研究
要旨
 戦後日本社会において、学校教員は地域社会に深く関わる存在であった。これまでの一般的な日本教育史像では、戦後教育の歴史を教育運動と国家との対立を軸にして理解してきたが、「戦後教育学」への批判のなかでこうした視座は弱まりつつある。しかし、戦後日本の学校教育において社会運動の側面が果たした役割は大きく、これを等閑視することはできない。近年の研究では、木村元らの「教育の社会史」研究が、社会経済的側面にも注意を払いつつ、学校教育やその担い手である学校教員を社会の側から把握することを試みている。また、戦前を対象とした教育会研究を、教員の社会組織の一種=「教員団体」として捉えなおすことで、教員組合・校長会・各種の教育 研究会と いった学校教員による学校を超えた「教育空間」を展望でき、そこから戦前・戦後を通じた学校教育史像を試みることが可能となるように思われる。
 また、日本現代史研究では1950年代および高度成長期を対象とした研究が蓄積され、社会運動研究では新たな研究水準が切り開かれている。この研究状況を踏まえて、日本現代史の構造と変動を社会経済的に把握しつつ、具体的な状況と経験を地域社会運動を通じて明らかにすることを目指し、1950-60年代を対象時期に設定する。京都府丹後地域は、西日本農山村型の社会変動を経験して典型的地域であるとともに、地場産業である絹織物業(丹後機業)が地域の経済および社会に特殊な規定を与えいるのであり、これまでも経済学や地理学において注目されてきた地域である。
 以上から、博士論文は二部構成とし、第一部では1940-60年代の学校教員の社会組織について論じ、学 校教育の制度や機構、教員文化や教育実践といった学校教育の総体を展望することを企図しながら、特に教員組合の役割に注目する。この研究を通じて、戦後日本における学校教育の領域の歴史的把握=戦後日本教育史像の再構築に資する議論を目指す。第二部では丹後地域における1950-60年代の地域社会運動の形成・展開と、学校教員が果たした役割について論じ、地域社会・学校教育・社会運動の三者の関連および、1961年の「ちりめん闘争」に集中的に現われる地域社会の諸問題を明らかにする。この研究を通じて、同地域における日本現代史の展開を展望する。

富山仁貴

PageTop