日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

12月24日 例会報告要旨

月性『仏教護国論』の主張とその影響

 今回の報告では、幕末期の代表的な勤皇僧の一人である西本願寺の月性が著した『仏教護国論』について取り上げた。『仏教護国論』は、開国により西洋との貿易が始まったことでキリスト教が流入し、日本仏教ひいては日本が衰退することへの月性の危機感から執筆され「護法・護国・防耶」を一体のものとして訴えた文書である。月性は、キリスト教流入に対抗するためには八宗の僧侶が民衆を教化し民心を統一してキリスト教に惑わされることが無いよう「教ヲ以テ教ヲ防グ」こと。諸外国との紛争が起きれば庶民も武器をとり、皇国を防衛するべきであるとの主張を展開した。西本願寺は月性の主張に立脚して勤皇の態度をとって長州藩に接近し、他の仏教宗派にさきがけて新政府への支持を表明した。また、明治維新後には月性の「教ヲ以テ教ヲ防グ」という主張は大教院の設立によって実現する。しかし、大教院は島地黙雷による大教院分離運動によって解体され、月性が敵視したキリスト教信仰は、信教の自由の保障を求める諸外国の抗議もあって黙許されることになった。『仏教護国論』での主張は幕末期においては西本願寺を勤皇に傾かせる影響力を発揮したが、西洋の政治制度を導入することで近代化を行うという明治時代に入ってからは一挙に影響力を失うこととなった。月性の主張には限界が存在していたものの、明治以降の国民国家建設の志向とナショナリズムの萌芽ともとれる主張も存在しており、これらの点については今後の調査が必要である。報告後の質疑応答では、発表の力点が月性の主張に置かれているのか、近代日本と仏教との関係に置かれているのか不明瞭であること、同時代の国学・水戸学などとの関連についても言及が必要であるとの指摘を受けた。

文責:橘 宏

PageTop