日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

2015年11月5日 例会報告要旨

 本報告では、修士論文の内容に基づき、近世前期の儒者である山鹿素行の『中朝事実』における「武徳」による華夷秩序論を考察してみた。素行は「武」の正当性を天・神から求め、「文」「武」は陰陽五行のように互いに支えないといずれも存在できないものとするのを明らかにした。「王覇は一なり」と唱えるのを通し、「武」の重要性を「文」と同一視しようとする素行は、「礼・法」文明の華夷観念と違い、「武徳」によって成された日本中心的な華夷秩序を築き上げた。蝦夷を東夷とし、高句麗新羅百済三韓を西戎とし、日本を中心とする「国際環境」が描き出され、東夷西戎の朝貢と服従が想像されてきた。にもかかわらず、素行の「天下」観においては、『日本書紀』から取り上げた「秦漢」の人々のことが「朝貢」より、「来化」という言い方によって解釈されている。それは『日本書紀』という文献から日本を中心に四夷朝貢という記事が少ないため、それに加え、素行の「天下」観には、「外朝」が「中朝」と平行して「天下」を共有する存在として捉えられていることが見て取れよう。つまり、日本を中心とする華夷秩序には、「外朝」が「中朝」と同様の位置づけを占めている。それは、素行における「中心がふたつある」的な天下観であるように思える。

文責:黄薇姍

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