日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

2014年11月20日例会討論要旨

最初に事実確認として、従来の民衆宗教研究に対する本報告の位置づけ、ならびに昨今の「宗教」概念研究についての質問が出された。これに対し報告者は、既往の民衆宗教研究が近代において創出された「宗教」という概念に対して無自覚であった点を乗り越えるために、「宗教」概念研究の成果を斟酌しているとし、加えて具体的には近年のタラル・アサドらによる研究成果に依拠していると答えた。続いて同様に事実確認として、報告者が用いる「帝国」とは具体的に何を指しており、かくなる概念を用いることでいかなる視点を提供できるのか、といった質問が出された。これについて報告者は、近代日本が植民地を有していたという事実は、とりもなおさず帝国であったということを指すが、ここでいう「帝国」とはさらに進んで、往時の「帝国日本/植民地」といった二項対立を止揚しようとする意図のもとで用いる概念であると答えた。この「帝国」概念をめぐってはほかにも、本報告が「帝国史」を射程とすると主張しながらも、結局は大本教と普天教という二つの民衆宗教の比較研究に陥穽してしまっているのではないか、あるいは従前の帝国主義研究の成果も踏まえるべきではないか、といった質問も出された。これらの点につき報告者は、「帝国」についてさらに検討を重ねてゆく必要はあるものの、「帝国史」とはあくまで理論的な枠組みであり、具体的な対象としては、「近代」という時代における民衆宗教の思想的形成過程に主眼をおいて研究を進めてゆきたいと返答した。また報告者が「帝国」と併せて用いる、民衆宗教における「普遍主義」という概念についても、「帝国」と「普遍主義」との範疇は果たして同様のものとして考えられるのか、といった質問が出されたが、これについては基本的には同様の範疇と見てよいものの、さらなる検討は必要であると報告者は応酬した。ほかには、民衆宗教研究が前提とする「民衆」が「近代」の場合にはいかなる存在であったのかを精査する必要や、理論的前提を一度出て実証的に近代民衆宗教像を明らかにしてゆく必要など、様々な課題がフロアから提起された。

文責:松川

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