日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

2013年5月20日例会討論要旨

今回は原田直哉氏から竹内好「国の独立と理想」についての報告があった。
まず、竹内の叙述内容につき質疑が行われた。松川氏から当時の講和・独立が外的なものであるため内的なものが必要ということなのか、竹内の言う「民衆の哀歓」とは具体的になんなのか。殷氏から理想として中国・インドを挙げているが、インドについて具体的にはどのように考えればいいかという質問がなされた。それに対し報告者は、竹内は詳しい説明をしていないが、少なくとも内的なものとは政府間でのやりとりに終始している状況ではないものが想定されると答えた。
ここで司会から、本報告では竹内がふまえたという雑誌『世界』のアンケートというものを実際見られているようだが、具体的にどのようなものかの補足説明が求められた。報告者は、このアンケートは5つの項目で行われ①講和に関する政府の発表は安心できるか②不安であればどんな点か③一言言いたいことは何か④発表は国民の総意か⑤講和は世界に貢献するかというものであったと答えた。これを受け石原氏から、アンケートに「国民の総意」というものが挙げられているにもかかわらず、竹内は「国民の哀歓」と言っている。この違いは何か。「国民の総意」とは社会的なものか、雑誌が設定したものかとの質疑がなされた。報告者は、違いについて明確なものは示すことができないが、少なくとも社会的な問題として「国民の総意」が反映されていないと考えているから、アンケートにこういう項が立てられたのであろうと答えた。
ここで松川氏が、中国の革命という契機を竹内がふまえていることを注意すべきではないか。同時代的なナショナリズムの問題、政治的問題と絡めて考えるべきではないかとの批判がなされた。これに対し報告者は、それが重要であると認識しているが今回はそこまで踏み込めなかったとした。これを受け、風間氏が当時の講和に対する立場として①とにかく独立を求める②全面講和なくして独立なし③全面講和に立ちながらも現状の把握を通じて全面講和を考える、という3つがあり、竹内は③の立場にアジア認識をふまえた点が特徴と考えられるのではないかと指摘した。報告者もこれに同意し、アジアというものがキーワードと考えるとした。
ここで松川氏は、アジアを考える言説は戦前・戦後日本通じて存在するが、戦後の言論の方がアジアを議論の内から切り捨てているように思う。アジアを語るときに誰かが作ったバイアスを借りて行っていると指摘した。報告者も、その質問の趣旨はよくわかる。そういう部分を考えていけば竹内が本稿で言う「理想」が見えるのではないかと答えた。
最後に風間氏が、当時の「近代化論」を受けて丸山真男は中国や日本独自の「近代化」があってよいと主張して論争する。竹内は「アジア的近代」を強調するが、その議論はどこまで有効なのか、いつの時代まで有効性を保持しえたのかを考えなければならないのではないかと指摘した。
竹内好を議論していく上で重要な問題点が提示されたという意味で、今回の討論は有意義なものであったと考える。

文責 宮本敦恒

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