日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

2013年6月13日例会松本報告要旨

本報告は、竹内好「岡倉天心」を題材にして、竹内による岡倉天心の読みを通して竹内の近代理解に迫らんとするものであった。最初に岡倉天心に関する研究史を簡潔にまとめ、竹内「岡倉天心」を前後する松本三之介と橋川文三の岡倉論を見てから、その上で竹内の岡倉論に入った。竹内の天心理解の要点は「明治国家の文明開化コースへの内在批判」としての天心を位置づけようとしたことにある。論点は三つあり、第一に天心の本領は日本美術院の創設を含むことを論じ、第二に「アジアは一つ」は理念であって現実認識ではない点、第三に伊沢修二との対抗関係で論じ、これらの議論をひとつずつ検討していった。かくして、竹内好は岡倉天心の「アジアは一つ」という命題に、「方法としてのアジア」を見出そうとしたのではないかと考えた。また、竹内は天心の行動に思想的意義を認めており、それを「抵抗」といった表現で表すことから、竹内自身の思想も岡倉天心の読みに反映されており、これが竹内の近代理解の一端でもあるとも考えた。さらに、竹内の天心理解と伊沢理解とを対比させて、〈帝国〉のなかでの芸術の位置づけがどう理解されるのか、という疑問点を提示した。最後に、本報告では十分に準備できなかったのだが、日本ロマン派による天心理解についても整理しておく必要があるという課題が残った。

(文責:松本智也)

PageTop