日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

10月18日例会討論要旨

今回は、山口一樹氏によって「北岡伸一『官僚制としての日本陸軍』」の報告がなされた。主として、北岡氏の著作を要約し、自らの見解を述べるという書評形式の報告であった。

 討論では最初に、報告者の研究ないしは先行研究と、今回の北岡氏の著作との関係性についての質問がなされた。これに対し報告者は、自らの研究との関係で言えば、従来、先行研究が絶対的に乏しい宇垣一成に関する多くの論及を、北岡氏がなしているという点で意義深い、と答えた。さらに報告者は、自らの研究とは、「なぜ日本陸軍は「暴走」したのか?」という日本陸軍研究の課題に対して、当該期において一定の期待感と共に眼差された宇垣をメルクマールとすることで、当該期日本陸軍の構造的問題を浮き彫りにしようとする点にあると、補足した。次に、軍・政党間の認識の差異とは、いかなるものであったのかという質問がなされた。これに対し報告者は、宇垣に即せば、軍は明らかに政党を「私闘」に始終する存在とみなして、批判的に捉えており、その意味では軍・政党間において決定的な認識的差異は、確かに存在すると答えた。しかし、同時に軍が政党を批判的に捉えていたからといって、実益的な部分では政党と連携する必要性があったので、両者の認識の差異という観点のみから考察するわけにはいかない、とも回答した。その他フロアからは、軍と政治とを二項対立的に捉えるのではなく、例えばカール・シュミットのごとき議論に即せば、むしろ「主権」とは「例外状態」を可能にする力であるため、軍が政治に先行するものとしても捉える必要があるのではないか、という指摘もなされた。

 全体的に専門性の高い報告であったが、種々の分野を専攻する参加者から、様々な意見が出されたという点において、有意義な例会であったものと思われる。

文責:松川雅信

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