日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

7月12日例会報告要旨

7月12日例会での報告要旨についてお知らせします。

【報告要旨】

丸山真男の『忠誠と反逆』は、主体と主体をめぐる外部の問題を、日本思想史を舞台に描いたものである。とくに、徳川の武士集団の感覚的で人格的な忠誠観が、封建性の組織化と拡大、そして、それによる思想史的合理化によって抽象的に変質されていく過程、また、 武士的エートスが明治維新を前後とした天皇の超越性の再確認のもとでどのように変形していくのかに注目する形で全体的な叙述が始まっている。そして、明治に入ってからの天皇制イデオロギーが、忠誠と反逆の側面から社会的にどのように現れていたのかを語る。

今回は『忠誠と反逆』の読解の一例として酒井直樹の「丸山真男と忠誠」(『現代思想』22-1、1994)を紹介した。ここで酒井直樹は、本研究が丸山の『日本政治思想史研究』以来堅持している問題意識の反復であると批判する。つまり「即自的な民族共同体からいかにして個の主体的な選択に基づく国民共同体を制作するか」という問題は『忠誠と反逆』に受け継がれており、その意味で丸山の出発点はつねに日本人知識人としての「存在被拘束性」の自覚からなされていると批判する。

最後に議論の焦点となったのは、丸山のいう「ネガ」をどのように考えるべきかという問題であった。イデオロギー側に立つ運動も、それに反対する運動も、組織の全体的な力となることはできず、そのかぎり忠誠と反逆はつねに体制の両面を表わすものであると丸山は語っている。このようなことから、体制あるいはシステムのイデオロギーにおける忠誠と反逆がもつ「ネガ」というものは、その反対に「ポジ」を持たない極端的な虚無感を与えざるをえない。

文責:許智香

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