日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

2015年7月2日例会報告要旨

本報告では、ホブズボーム『帝国の時代』(1、野口建彦・野口照子訳、みすず書房、1993年)第3・4章の要約を行った後、ホブズボームの帝国主義理解に関する所感を提示した。
第3章では、1880年から1914年の間は、それ以前にはなされてこなかった圧倒的な経済的・軍事的優位を有した(特に欧州の)資本主義諸国による公式の征服、併合、統治といった形の系統立った試みが現れ、世界の大半が欧米や日本といった一握りの国々の公式の統治もしくは非公式な政治的支配の下に分割される「帝国主義」という新しい形態が登場した時期であったとされた。また「西欧(および一八九〇年代以後の日本)の領土拡張が他の世界に与えた影響に関する問題および、宗主国にとって帝国主義の「帝国的」側面が持つ意味の問題」(本書103頁)について、前者は、帝国主義は経済的には宗主国と従属国との関係が著しく不均衡なものであり、また文化的現象としては従属国エリートに対して「西欧化」を与えるといったものがあると指摘する。後者については、ベル・エポックの眠りを妨げる悪夢として黄禍論、民主化といった問題が生じていたとする。
第4章については、「一八七〇年以後、国政の民主化が全く避けがたいものであることはますます明白になって」きた状況(本書121頁)であったが、1880年から1914年の間の民主政治の発展は、その永続性も、また世界的規模での勝利を示すものではなかったことが論じられていた。
所感としては、ホブズボームの帝国主義理解は依然として経済的要因にもとめるものであり、それ以外のファクターに冷淡ではないかという点、本書84頁のレーニン『帝国主義論』に対する註において、レーニンの理解は、帝国主義を最新段階とするものであり、古いものからの連続でも最高段階でもないというものであって、レーニン以後の理解の問題を指摘している点、そして1918年以後は自由主義的な立憲政治と代議制民主政治が後退をみせた時期であり、1945年以後にそれらは部分的に回復しているとする点に対して、ホブズボームにとって1918~45年はどういった時代であったかなどを挙げた。

文責:山口
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2015年7月2日例会討論要旨

7月2日松本報告(ホブズボーム『帝国の時代』1、野口建彦・野口照子訳、みすず書房、1993年、序章・第1章・第2章)の討論では、まずレジュメ中に引用された文言に関する確認などがなされた後、報告者が論点として挙げた「歴史と記憶との関係―現代史への視覚」、「歴史学と経済学との関係―方法論的問題」に対する質問が出された。
前者については、「1980年代にその70年前である1914年について考えようとした。2015年に生きる我々が70年まである1945年を考えるヒントになりはしないか。」という論点に対して、帝国主義時代を生きたホブズボームにとっては、執筆当時の時代性から70年前の1914年を考えたのであって、スライドするように1945年について考えるということは問題ではないかという疑問が出された。これについて報告者は、記憶とその消失という問題があり、またその記憶をもつ人々が現代を作ったわけであり、その影響力などについても考える必要があるとして提起したと応答した。後者については、ホブズボームが指摘する歴史学と経済学の分離の問題は、マルクス主義的な経済分析の観点から生じたものかという質問が出された。報告者からは、単純な計量的な分析ではない、例えばA→Bへと変化することを説明することの重要性からだとの返答がなされた。
最後に、歴史と記憶との関係に関連して、マルクス主義とホブズボームのナショナリズム研究との関係についての質問が出た。これに対しては、ホブズボーム自身の経験、あるいはアンダーソンなどのとの比較から考えることができるのではないかとの回答を受けた。
(文責:山口)
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2015年7月9日例会報告要旨

国家とナショナリズム」について節ごとの論点を、内容要約・原文引用を引き合いに提示した。考察では、まず本報告で参考した二つの訳書(日本みすず書房2003版、中国江蘇人民出版社1999版)を、原著(米国ランダムハウス社1989版)と対照し、両バージョンの翻訳の問題を指摘した。続いてホブズボームのナショナリズム論における「プロトナショナリズム」概念の理解、すなわち「近代以前のナショナリズムの総称」といった包括的性質の定義は、果たして常にダイナミックな変遷を見せているナショナリズム自体、もしくはそれについての研究においてはよいのかという疑問を提示した。

文責 張琳
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2015年7月2日討論要旨

討論段階では、まずホ氏が提示した論点――帝国の時代において、イギリスの植民地政策の目的は、領土拡張ではなく、従来の貿易と支配の維持にある――に対し、日本戦前の「オールドリベラリスト」の「植民地放棄」「貿易立国」といった主張が、当時のイギリスの政策と類似しているとコメントされた。報告者は、戦前日本の自由主義者たちは確かにイギリスをモデルとしていたが、具体的な理論と実践が欠けていたから、挫折したと答えた。続いて報告者が用いた「非公式帝国」概念への再解釈が求められ、報告者はその概念が加藤陽子氏の論述から受け継いだもので、非マルクス主義的帝国論である、ギャラハーとロビンソンによって提唱された「自由貿易帝国論」の中核概念であると答えた。従来の植民地帝国を「公式帝国」と定義される一方、政治的・経済的な従属下にあるものの公的な支配を伴わない帝国を、「非公式帝国」と呼ばれ、総じてウォーラーステインが提唱した政治的統合を伴う「世界帝国」vs政治的統合を伴わない「世界経済」といった対概念と似ていると回答した。

文責 張琳
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台風接近による例会中止のお知らせ

本日7月16日例会は台風接近により中止となりました。
本日予定されていた報告は来週に延期することといたします。
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2015年度研究会合宿について

本年度の思想史研究会合宿について

日程:9月8日~10日(二泊三日)
行先:岡山
行事予定:研究報告会、「慰安婦」問題勉強会、調査旅行(岡山市内、閑谷学校、牛窓など県南東部を中心に検討中)

詳細が決まりましたら随時ホームページにてお知らせいたします。

広報:安久

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2015年6月11日例会報告要旨

本報告では、E・J・ホブズボーム『資本の時代』における報告者の担当範囲であった四章「紛争と戦争」、五章「諸国民の形成」、六章「民主主義の諸勢力」について簡単な内容要約を行い、そのうえで当該箇所に関した論点を提示した。
 論点としては、先行するナショナリズム論や、あるいはホブズボーム『創られた伝統』における議論をも交えつつ、本書に示された「諸国民の形成」がもつ特徴を剔出してみた。ナショナリズムを、近代においてまさしく「想像」されたものであると見なしたB・アンダーソンや、ナショナリズムの原型としての「エトニ」を見いだすA・スミス等と比較してみると、ホブズボームが本書において示した「諸国民」の形成過程は、複雑な歴史的諸事情における仔細に目配りがされている点において特徴的であるといえる。併せて、ナショナリズムの高揚を、したからの「民族主義」と接点をもつ「民主主義の諸勢力」との関わりにおいて論じている点も、ホブズボームの議論に特徴的な点として見いだすことができると思われる。

文責:松川雅信
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2015年7月2日例会予告

7月2日例会予告
『帝国の時代』班
担当範囲
松本: 序章・第一章・第二章

山口: 第三章・第四章

以上のようになっております。
よろしくお願いいたします。
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