日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

2015年4月23日例会報告要旨

E.J.ホブズボーム論――19世紀三部作を読むにあたって

 本報告では、日本思想史研究会の2015年度前期テーマである「ホブズボーム19世紀三部作を読む」に当たり、その前提としてのホブズボームの人物と研究ならびにその受け止めをめぐる状況を分析する。E.J.ホブズボームはユダヤ系イギリス人のマルクス主義歴史学者であり、ドイツ時代にナチの台頭、第二次世界大戦への従軍、その後のイギリス共産党員・批判的知識人としての言論活動が知られている。研究においては、①労働史・民衆史、②19・20世紀シリーズ、③歴史像・歴史理論、④時評・文化論・回顧等の分野に大別できよう。ホブズボームは生涯を通じてこの4つの分野の研究を行っているが、徐々に①から④に向かって重点を移してきたように思われる。
 日本の歴史学においては、ホブズボームはイギリス経済史やマルクス主義への問題関心から1960年代末~80年代初頭にかけて集中的に紹介が行われた。その後、翻訳の基調が変化し、「戦後歴史学」やマルクス主義の問い直しの文脈で紹介されるようになる。その転換期にあたる1970年代末のホブズボームをめぐる論争において、マルクス主義グループとアナール派の影響を受けたグループの議論は明らかに齟齬を来していた。その要因はニューレフトの受容の仕方の違いにあったのではないか。この論争の忘却の上に、今日の「社会運動史」をめぐる理論的混迷もまた理解することが出来よう。

文責:富山
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