日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

2014年6月26日例会報告・討論要旨

6月26日報告要旨
村上重良の研究以来、戦前の国家神道の研究は、実効性の成否も含めて常に議論の対象であった。これらの先行研究は近代神道の批判的検討に貢献したが、研究の細分化や村上の理論への疑問から、「国家神道」の概念の有効性が再検討されるようになった 。また、村上が理論的に依拠していた講座派マルクス主義や近代主義的宗教観は90年代において一挙に退潮する。このような状況において、島薗進や子安宣邦は、それぞれの問題意識から村上重良の「国家神道」を取り上げ直す。だが、その取り上げ方の違いが、相互に論争をもたらすことになる。本報告では「ちきゅう座」というインターネットの情報サイトで展開された子安氏と島薗氏の論争をとりまとめ、その意義について検討した。
この論争は、引用をめぐるトラブルや感情的なぶつかり合いを取り除けば、次のようにまとめることができる。島薗は宗教学の議論として国家神道を再活用し、その有効性を鍛え直すことを目的とする。これに対して、子安はそのような見なおしは村上の怒りを見失うものであり、反近代性批判から国家の装置批判へ視点を変えることは可能でも、村上の「国家神道」の枠組そのものを問い直してはならないという立場をとる。そのため、島薗の国家神道の問いなおしは、神社神道無罪派と同じ論理構造をもつとして、激しい怒りの対象とならざるをえない。しかし島薗にとっては、国家神道概念の空洞化が叫ばれる現状において、国家神道の再定義を見直すこと自体を批判されることは、自身のこれまでの研究はおろか宗教学や歴史学のこれまでの成果を否定するに等しいことであるので、反駁せざるを得ない。難しい問題であるが、村上の怒りや研究が、首相の靖国参拝問題や過去に無批判な神道ブーム、皇室崇拝によって両方ともに危機に瀕している現状を変更するには、この論争を両者の遺恨問題として受け止めるのではなく、現在の国家神道の研究が抱える問題点が浮彫になった事件として捉えるべきであろう。そこから考察をはじめることこそが、国家神道の批判意識と理論の深化への第一歩ではないかと思う。

討論要旨
まず報告者に対して、国家神道のはじまりを、島薗はいつと捉えているのかについて質問があった。報告者は、江戸時代後期から明治初期にかけて国家精神秩序構想としてまとめられ、維新前後から明治後期にかけて統合的な制度として展開していったと捉えていると答えた。次に子安の国家神道理解に対する評価について質問があり、報告者は、国家神道の研究分野において、子安氏の研究は管見の限りそれほど参照はされていないと答えた。最後に、研究史整理が駆け足気味であったので、どのような議論を踏まえた上で、子安や島薗の議論が出現したのか、より丁寧な背景の説明が必要ではなかったかというコメントがあった。これに対して報告者は、今回の報告では、思想史と宗教学、歴史学の議論が混在しがちであった。それらを一旦時系列で整理した上で、提示すべきであった。今後の課題としたいと答えた。

文責:西田
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2014年7月17日例会松川報告題名

下記の通り、例会を行います。本日は三人による報告を予定ししています。

論題:「近代」をめぐる二つの思想史―安丸良夫と子安宣邦―

報告者:松川


参考文献:田尻祐一郎「総論 近世の思想」(『日本思想史講座』3巻、ぺりかん社、2012年)

よろしくお願い致します。
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2014年7月17日例会富山報告題名

論題:戦後日本における歴史学の転換と安丸良夫――「日本の近代化についての帝国主義的歴史観」を手がかりに

報告者:富山

【参考文献】

・安丸「日本の近代化についての帝国主義的歴史観」(『〈方法〉としての思想史』所収、校倉書房、1994年、のち『安丸良夫集』第5巻所収)

・安丸『現代日本思想論』(岩波書店、2004年、のち岩波現代文庫G278、2012年)
・戸邉秀明「戦後史学史のなかの安丸民衆史――ある全体性のゆくえ」(安丸良夫・磯前順一編『安 丸思想史への対論』所収、ぺりかん社、2010年)
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2014年7月17日例会殷報告題名

下記の通り、今週の例会を行います。今週は三人報告です。

論題:通俗道徳と「「心」の哲学」をめぐって

報告者:殷


【参考文献】

安丸良夫『安丸良夫集1民衆思想史の立場』岩波書店、2013年

布川清司「書評:安丸良夫著『日本の近代化と民衆思想』」『日本史研究』(149号)、1975年

大桑斉『寺檀の思想』教育社、1979年

大桑斉『民衆仏教思想史論』ぺりかん社、2013年
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本日の例会中止につきまして

本日の例会ですが、台風8号の接近による風雨が懸念されるため、中止といたします。

特に電車等で遠方から来られている方は、台風再接近時間と帰宅時間が重なる恐れがあります。

また、立命館大学近傍にお住まいの方も、風雨や急な増水の恐れもあります。皆さまにおかれましては、くれぐれもお気を付け下さい。

次回は7月17日(水)に報告者3人で行おうと考えています。

よろしくご参集下さい。
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2014年7月10日例会につきまして

下記の通り、例会を行います。

タイトル:安丸良夫における歴史学研究の形成――「日本の近代化についての帝国主義的歴史観」を手がかりに――

報告者:富山


参考文献:

・安丸「日本の近代化についての帝国主義的歴史観」(『〈方法〉としての思想史』所収、校倉書房、1994年、のち『安丸良夫集』第5巻所収)

・安丸『現代日本思想論』(岩波書店、2004年、のち岩波現代文庫G278、2012年)
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2014年7月3日例会討論要旨

 最初に、報告者の安久氏が安丸における「民衆」をいかに考えているのか、畢竟安丸思想史における「民衆」を「闘う民衆」と見なしてもよいのか、むしろ「闘う可能性」として捉えるべきではないか、という質問が出された。これに対して報告者は、「闘争」を行うものの、往々にして支配権力の側にとり込まれてしまうものこそが「民衆」であるが、出口なおのように「通俗道徳」を貫徹させることで、逆に「近代化」批判に転ずる論理をも有するのが「民衆」であると回答した。この回答に対して同質問者はさらに、往時の講座派における「闘争」路線からの脱却過程に安丸思想史における「民衆」概念が存在するのではないか、と反批判を行った。加えてフロアからは、こうした一連の応酬に対して、『日本の近代化と民衆思想』の初出論文が1965年である点を鑑みると、従来の講座派的論理の範疇にある点は否めないが、一方でエンゲルス『ドイツ農民戦争』などの影響を受け、安丸思想史自体が1970年代より新たな可能性の模索に向かうことも、確かであるとの意見が出された。
 続いて、報告者の原田氏に対しては、『近代天皇像の形成』において「近代国民国家」の議論が持ち出されるゆえんに、「国民国家論」の隆盛といった要因があるのではないか、という意見が出された。これに対してはフロアより、「天皇制」をめぐる歴史学の議論と「国民国家論」との研究史的位置を精査する必要があり、前者については「戦後歴史学」の主軸のなすテーマであった他方、後者に関してはまた別の方面から提起されてきた問題であるゆえ、安易に「近代天皇制」をめぐる議論と「国民国家論」とは結びつけて考えられない、として質問者の意見に対しての議論が巻き起こった。
 また、両報告者に対して、安丸においてサルトルがいかように受容されているのか、という質問も出された。この質問に対してはフロアより、「民衆の実存性」という観点から、安丸にあってサルトルは受容されているのではという意見が出、近年の「戦後歴史学」に関した研究についての整理をめぐって様々な応酬がなされた。
 ほか、例えば『日本の近代化と民衆思想』に宮田登が大々的に引用され、『近代天皇像の形成』に「民俗宗教」といった用語が使用されている点より、安丸思想史と民俗学とはどのように結合しているのか、といった質問が両報告者に対して出された。これに対し報告者の安久氏は、宮田登に限らず、柳田国男への言及が多数散見される点からも、安丸が民俗学を強く意識していたことは間違いないと返答を行った。またフロアからは、宮田登らが見出し得なかった「民衆の可能性」にこそ焦点を当てたのが、安丸における一連の仕事ではないか、といった意見が出された。
 最後に両報告者に対して、安丸は「民衆の生活」というものをどのように考えていたのか、という質問が出された。この質問に対しまず安久氏は、初期の安丸において「民衆の生活」は決して明るいものとしては捉えられていないものの、一方で「民衆の生活」の中に「対抗」の主体が見出されていることは確かであると回答した。続いて原田氏は、少なくとも『近代天皇像の形成』に関していえば、「民衆の生活」レベルには「天皇」「国家」「神道」といった概念は浸透しておらず、かかる浸透に拍車をかける存在として中間支配者層が描かれていると答えた。

文責:松川
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本年度の研究会合宿につきまして

日時:2014年8月5~7日
場所:埼玉大学(宿泊は浦和を予定)


おおよそのスケジュールと致しましては、下記を予定しております。

8月5日:研究報告会(13時~17時埼玉大学)、懇親会(18時~)
8月6日:フィールドワーク(終日)(レンタカー移動を念頭に調整中)
8月7日:解散

本年度は、東北大学・埼玉大学との共同開催を予定しております。研究報告会につきましては、個別報告(立命館大学・東北大学より1名ずつ)のほか、合同書評会(著書は調整中)も予定しております。

何卒よろしくお願い申し上げます。
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2014年7月3日例会原田報告題名

今日の例会につきまして、お知らせします。

報告論題:「安丸良夫と明治維新」
報告者:原田


参考文献
安丸良夫『神々の明治維新-神仏分離と廃仏毀釈』岩波新書 1979
安丸良夫『近代天皇像の形成』岩波書店 1992
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2014年7月3日例会安久報告題名

今週の例会につきまして、下記の通り、行います

報告論題:安丸良夫と「通俗道徳論」・「民衆思想」

報告者:安久


参考文献
・安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』(青木書店、1974年)
・安丸良夫『出口なお』(朝日新聞社、1977年)
・安丸良夫『日本ナショナリズムの前夜』(朝日新聞社、1977)
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