日本思想史研究会(京都)のブログ

本研究会は立命館大学を拠点に、歴史学・思想史の問題について時代・地域に捉われることなく、深く考えていく場として設立されました。2014年度後期例会は、個人研究テーマ報告です。

10月25日例会報告要旨

本報告では近世の食をより立体的にみていくために考古学、とりわけ骨から栄養についてみた。 献立史料の栄養分析では推測という面が大きかったがだいたい一日1800~2000キロカロリーの摂取をしていたと思われる。しかし記録に残るものの多くからは、それらが識字能力をもつ階層ということもあり、食生活に困らない、むしろ華々しささえうかがえる。その一方で庄屋階層に記録からは大根の葉を茹で、そのなかに大根の角切りにしたものとゆりこや麦や稗などを石臼で挽き、それを団子状にしたものを5つ程度いれたものが食事としている。 近世遺跡から発掘された骨からともに栄養不足が原因で発症するがんかし眼窩篩と歯の異常をみることで献立史料からはうかがえない実態を把握した。また、一見すると華々しくみえる献立にも栄養偏重などの問題が内在している可能性を考えるきっかけにもなり、修士論文において献立史料という表面と考古資料という実態とをよりからませた立体的な提示を試みる端緒となった。 文責:赤間宏貴
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10月25日例会討論要旨

今回は、赤間宏貴氏によって「考古学からみる近世の食生活」の報告がなされた。主として、近世の食をより立体的にみていくために考古学、とりわけ骨から栄養について考察した報告であった。

 討論では、まず、「眼窩篩にみる各時代の栄養」において、「個体数の違いや栄養不足でも縄文時代より長生きられた環境と考えられる江戸時代とを比較して江戸より栄養のよい縄文人ということはできないだろう」という考えは面白くて適切である、と評価された。さらに、報告者は、時代背景の違う比較より、江戸時代の食べ物と病気の関係や、都市部と農村部の栄養格差などの面から、自らの研究を進めていこうと、補足した。そして、江戸時代に肉食忌避の思想が庶民層まで徹底した原因が何かという質問がなされた。これに対し報告者は、血が汚れものとされる「穢れ意識」が存在していたから、そのような思想はだんだん上層から下層へと広げていった。江戸時代の人々は牛肉や豚肉をあまり食べずに、そのかわりに魚などからタンパク質を取る。それで、献立では魚の料理が多い、と回答した。

 全体的に専門性の高い報告であったが、種々の分野を専攻する参加者から、様々な意見が出されたという点において、有意義な例会であった。



文責:王夢如
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10月18日例会討論要旨

今回は、山口一樹氏によって「北岡伸一『官僚制としての日本陸軍』」の報告がなされた。主として、北岡氏の著作を要約し、自らの見解を述べるという書評形式の報告であった。

 討論では最初に、報告者の研究ないしは先行研究と、今回の北岡氏の著作との関係性についての質問がなされた。これに対し報告者は、自らの研究との関係で言えば、従来、先行研究が絶対的に乏しい宇垣一成に関する多くの論及を、北岡氏がなしているという点で意義深い、と答えた。さらに報告者は、自らの研究とは、「なぜ日本陸軍は「暴走」したのか?」という日本陸軍研究の課題に対して、当該期において一定の期待感と共に眼差された宇垣をメルクマールとすることで、当該期日本陸軍の構造的問題を浮き彫りにしようとする点にあると、補足した。次に、軍・政党間の認識の差異とは、いかなるものであったのかという質問がなされた。これに対し報告者は、宇垣に即せば、軍は明らかに政党を「私闘」に始終する存在とみなして、批判的に捉えており、その意味では軍・政党間において決定的な認識的差異は、確かに存在すると答えた。しかし、同時に軍が政党を批判的に捉えていたからといって、実益的な部分では政党と連携する必要性があったので、両者の認識の差異という観点のみから考察するわけにはいかない、とも回答した。その他フロアからは、軍と政治とを二項対立的に捉えるのではなく、例えばカール・シュミットのごとき議論に即せば、むしろ「主権」とは「例外状態」を可能にする力であるため、軍が政治に先行するものとしても捉える必要があるのではないか、という指摘もなされた。

 全体的に専門性の高い報告であったが、種々の分野を専攻する参加者から、様々な意見が出されたという点において、有意義な例会であったものと思われる。

文責:松川雅信
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10月11日例会討論要旨

【討論要旨】

今日の報告は、近世史の研究において、「幕藩官僚制」という視座から、徳川幕府の行政システムが検討されてきたことを踏まえた上で、従来は武士身分の人々をその担い手と見做してきたが、僧侶・儒者・茶人などの「坊主衆」と呼ばれた集団への位置づけが曖昧であることに着目し、彼らの歴史的意義を探ろうとするものだった。

質疑応答では、先行研究における「幕藩官僚制」という用語が、現段階で妥当な解釈であるかどうか、という質問がなされた。さらに江戸時代に「官僚制」という用語を使用することの意味合いについても質疑が行われた。また、「坊主衆」は、「家産的・世襲的」な性格を帯びていたのかどうか、ということも議題になった。また、当時における「坊主衆」たちは、全ての担い手が徳川幕府に仕えていたのかどうか、という基本的な質問もなされた。また、参考史料として挙げられた「絵図」と「地図」の違いについても指摘がなされた。本報告は、学内で行われる学会例会のプレ報告という位置付けでもあるため、報告者から、「より分かりやすくするためには、どのような工夫をすればいいのか」というフロアに対して求める場面も見られた。本報告は様々な可能性を秘めたテーマであり、活発な議論がなされたように思われる。

文責:岩根卓史
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10月4日例会報告要旨

「丸山論は如何にして〝可能〟か」という命題について、その可能性と課題について考えた。まず、新聞雑誌にみられる丸山眞男のイメージについて考察。丸山への「評価」がそのまま「戦後認識」のあり方に繋がることがわかる。この点、戦後の大衆インテリという視点から知識社会学的アプローチで丸山を考察し、戦後日本論を展開する竹内氏の論について紹介した。そこで、戦中派と戦前派の世代間闘争として吉本隆明と丸山眞男を捉える竹内氏の論から、橋川文三や三島由紀夫といったテーマを射程に入れて、広く「知識人のあり方」、「思想のあり方」という問題を考えうるのではないかと報告者は述べた。その点、吉本隆明論を取り上げ、吉本以来、丸山批判のテンプレとなっている「大衆と知識人」という命題について、吉本の丸山批判の要旨と橋川の吉本論への評価を挙げつつ、その批判的言説がむしろ、「丸山らしさ」としての思想のあり方を示唆しているのではないかという事を述べた。その一方で、長谷川宏氏の丸山論を引用しつつ、こうした問題が、広く学問・思想の問題として存在する事を指摘した。それは、いわゆる戦中派的言説にみられるある種の「危うさ」についての報告者の個人的問題意識に拠る。これは、三島事件からオウム事件といった今日的問題を貫く問題であり、そういった文脈において報告者の問題意識を述べた上で、丸山自身、そうした思想のあり方について、いわゆる、観念論と実在論の対立という図式について自覚的であったことを指摘した。(新カント派と素朴実在論における丸山の問題意識)その上で、丸山の言う「理論と現実の弁証法的統一による実践」というような言説に、こうした思想における宿命的命題を考える可能性があるのではないかと報告者は指摘した。

その上で、こうした丸山の哲学的課題を「デカルト的問題」と捉える間宮陽介氏の丸山論を紹介。丸山の精神史への視座とともに、丸山の「哲学」ともいうべき「思想(=問題意識)」を如何にして丸山思想史から考えうるかという課題が浮かび上がってくる事を指摘し、また、同時に、今日の丸山論の大きな傾向として、「丸山政治学」(いわゆる「夜店」)の検討から「丸山思想史」(いわゆる「本店」)の考察へのシフトという現象がみられる事を述べた。最後に、そうした視座を有した最近の丸山論の例として田中久文氏の丸山論を紹介した。ここでは、時間の都合上、丸山の主体性論を巡って、和辻哲郎や西田幾多郎、三木清などの「主体性」と丸山のそれとの比較研究が挙げられる事のみの紹介に終わった。

以上、本報告では、丸山を考える報告者の動機として、「丸山らしさ」を巡る思想の問題と個人的問題意識について述べ、同時に、そのためのアプローチとして、また、最近の丸山論の動向を鑑みて、これからの丸山論の課題は「丸山思想史」を如何に考察するかという点にあることを述べるにとどまり、具体的検討への課題を次に残した。

文責:風間健
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10月4日例会討論要旨

今回は、文学部3回生の風間建氏によって、「丸山眞男の「可能性」とその「課題」」という報告がなされた。報告内容は、風間氏の研究テーマである丸山眞男に関する先行研究を取り上げ、丸山眞男を論ずる「可能性」について考察するものであった。討論では、最初に報告の趣旨である「可能性」なる言辞についての具体的な質問がなされた。これに対し報告者は、丸山眞男における議論と、現代の「我々」の議論とをいかに「止揚」しつつ「可能性」を見いだすのか、という意味での回答がなされた。加えて、フロアからは、「可能性」を歴史学的な考察のもと、丸山に読み込むことの問題性が指摘された。次に、レジュメ冒頭にマックス・ウェーバー『職業としての学問』を引いた意図は何かという質問がなされた。報告者は、これに対して、丸山における議論から「学問のあり方」を考察する意図で、ウェーバーを引いたとの回答があった。また、史料・先行研究に関する質問がなされ、とりわけ吉本隆明を、近年の丸山眞男論と同列に先行研究として位置付けて良いのか否かという議論がなされた。なるほど、現代史において史料と先行研究をいかに峻別するのかという問題が、ここでは提議された。他、今後の展望として、丸山以外の同時代の知識人をいかに扱っていくのか、あるいは思想史におけるテクストの読みに関する問題が議論され、本例会を終えた。後期より、各々の研究テーマに関する報告がなされることとなったが、今回は前期テーマ「丸山眞男」と重複する点も多々あったため、参加者は少数であったものの、全体として活発な議論がなされたものと思われる。



文責:松川雅信
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今日の例会のお知らせ

お知らせが遅延していて申し訳ありません。

遅延に関しては、広報担当のメールアドレスが変わったことにより、

メーリングリストの登録がまだできていないことによるものです。

事態が解決次第、情報を更新していきます。

今日の例会については下記の通りです。

【表題】
「幕藩体制」と「官僚制」に関する一考察

【報告者】

股座真実子

【主要参考文献】
・藤井譲治『江戸時代の官僚制』(青木書店、1999年)
・笠谷和比古 編『公家と武家Ⅳ 官僚制と封建制の比較文明史的考察』(思文閣出版、2008年)

よろしくお願いします。
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